「信託交渉禁止」取り消し

夕子は憂鬱だった。借金取りの追求から逃れるために。夕子は子供の信子を住男に嫁がせる事により、一時的に借金取りからの追求をかわそうとした。住男の資産があてに出来ますよ、というわけだ。そのため、信子の縁談は当面住男に限って進める、との約束を住男と結びそれを公表した。
ところが、夕子自身が光男に身請けされる事になった。光男は自分の子託夫の嫁に信子を望んだ。家族全員が光男のお世話になることに夕子の反対はない。夕子は住男に信子との縁談の破棄を申し入れた。住男は黙っていない。信子は自分とだけ縁談を進める約束だった。裁判所にあの約束が有効である事、夕子と光男が進めようとしている信子の縁談の停止を認める様提訴した。地方裁判所は住男の言い分を認めた。今度は夕子が高等裁判所に控訴した。高等裁判所は「約束の有効は認める。ただ、もう夕子と住男の間の信頼関係は壊れた。この状態で信子と住男が幸福にはなれないだろう。夕子は光男との話しを進めてよろしい。」という判決を下した。
信頼を壊したのは誰なのか?信頼を破壊したことの代償はいかほどか?